マニアのメモ帳
ある展望車
いささか謎めいたタイトルで恐縮だが進行中のプロジェクトが一区切りついたので記事にすることにした。
1940(昭和15)年、満鉄あじあ号の成功に刺激された鉄道省が製造した当時本邦唯一の密閉式一等展望客車。時節柄1両のみの製造に終わった。
形式をマイテ37060形といい、全長21メートル、あじあ号同様の真空式蒸機冷房装置を備える豪華客車だったが自重が重く機関車の牽引定数の都合上これを連結する列車は座席車を1両減車せざるを得なかったという。
1列車特別急行「富士」の最後尾に連結されたが「おエラい」さんの乗車する日のみの不定期運用で一般に見られる機会は数少なく写真などの記録は現存しないと言われている。
さらに戦災でほとんどの関係資料は焼失、戦後の混乱期に現車も経緯不明の消失。一説によれば秘密裏に他形式に改造されたとも、解体されたとも、はたまた米国に持ち去られたとも!。謎の多い幻の車両。
という夢物語はこのくらいにして。
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実はこれ、余剰だったメーカー不明のスイテ37040の側板でデッチ上げた代物で、切ったり接いだり曲げたりの産物。昨年秋ごろから工作を開始したものの、おデコの造形で行き詰まり、ここまで半年の期間を要してしまった。
最初はセオリー通り屋根板を蛇腹状に切り込んで曲げ、半田で盛って成形してみたが切った貼ったの挙句形が整わず2個失敗。次に真鍮版を焼きなまして叩き出しを試みるも割れてしまいこれも敢え無く失敗。
最終的に馬蹄形に切った1ミリ厚真鍮板を12枚張り合わせて成形する方法で落ち着いた。組み立て途中で全体に熱が回るとバラけてしまう経験則から形状の都合で下側8枚とその上3枚は其々2ミリのネジ2本で固定した。
最初から通しのネジで固定する設計にすれば良さそうなものだが一個しか作らない試行錯誤の工作なのでどうしてもこうなる。手際の良い半田工作など望むべくもなく、貧弱な道具しかないのでネジ孔は数枚ずつ分けて工作。
というわけで第1エンドのおデコが重く重心は高く、さらに片側へ偏ってしまった。これでは軸重配分が不均衡で脱線の原因になろう。内側をルーターで削る必要がありそうだが騒音とキリコが恐くてできない。
これで一応の生地完成とするが、諸般の都合で今後の予定の目途は立っていない。この他にスイテ37040とスイテ49 1、時代の違う同型2両の車体も休眠中。