機関庫を訪ねて

モデルフォトストーリー

文:矢岳真幸

ある初夏の休日、早起きして僕は友人と高原のローカル線を訪れた。沿線での走行風景をカメラに収めたあと、シゴロクの引く混合列車に乗って高原の駅へと向かった。窓を開け放つと初夏の高原の空気が爽やかで心地よい。
のんびりと走る列車に一時間ほど揺られると件の駅に到着した。澄んだ空気を楽しむわけでもなかろうが、どの列車もここで必ず一休みする。実はここには小さな機関庫があるのだ。

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この機関庫は辺りに邪魔物がなく撮影には好都合なので、ここ数年、既に何回か来ていてどんなカマがいるかは知っている。僕の大好きな古いタイプのやつだ。
今日はお目当てのハチロクが束の間の休息を楽しんでいた。古びた煉瓦づくりの機関庫では今日は点検の日なのだろうか旧式のディーゼルが休んでいた。


小一時間ほど経つと今度はB6こと2120が仕業から戻ってきた。明治の頃から働きづめで少し草臥れているようだがまだまだ健在、若い奴等には負けんといった面もちだ。

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ここは高原地帯なので冬場は相当冷え込むのであろう、給水塔には凍結防止のためタンクに木の覆いがしてある。今日は時間帯のせいかキューロクがいなかったのが少し残念ではあったが、それでもやってきたカマ達を一通りカメラに収め僕たちはおおいに満足した。


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しばらくしてさっきのハチロクがゆっくりと駅の方向へ向かって行った。次の仕業に就くのだろう。それはこれから僕たちが乗る上り列車のようだ。

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その直後下り列車のピカピカの新型ディーゼルカーが軽やかに通過して行った。カマ達の元気な姿を見られるのも後僅かなのだろう。それまでにあと何回ここを訪れることができるのだろうか。

いつの間にかだいぶ陽も傾いてきた。名物の駅弁を買い込んでハチロクの引く列車に乗ろう。

--- 終 ---

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