地下鉄銀座線と日比谷線 |
銀座線は好きじゃなかった。ボロ電車ばかりだったからだ。地下鉄なのに釣掛モーターだったし、雑多な電車がごちゃごちゃと連なっていた。リベットだらけでゴツい電車の隣にのっぺりとした両開きドアといった具合で編成美なんてものは微塵も感じられなかった。それに駅に入る度に室内灯が消えた。地下鉄というものは日比谷線のようにヒューンと良い音でスマートなものだと信じていたので、山吹色の電車にはどうも馴染めなかったが、あの独特のホイッスルは愛嬌があった。普通のタイフォンとはひと味違う音色だった。 その銀座線もいつの間にかゴツいのが消え、さらにアルミ車になってシステム全てが新しくなり、打子式のATSもなくなった。もっとあのゴツいやつに乗っておけば良かったと、今ではそう思っている。同じ頃丸ノ内線も同様に新しくなった。赤い電車は地球の裏側へ売られて行った。 日比谷線の電車はスタイルはそれほどでもないが、パノラミックウインドウのピカピカのステンレスカーがひときわ眩しかった。南千住の急勾配で一気に地下に出入りするのがエレベーターのようだった。ぐいっと引っ張られるような加速感が感じられた。当時は東銀座までで、歌舞伎座のあたりは道路に鉄板が敷きつめてあり、工事中のせいか雑然としていた。ここの車両も世代交代し、マッコウクジラは長野で再就職した。東武の野暮ったいクルマも幾分マシなものに交替した。 |