シリーズ

1983年 北海道
-8- 上砂川支線(函館本線) 7.3km (1984年  5月15日廃止)
歌志内線       14.5km (1988年  4月24日廃止)
深名線         121.8km (1995年10月31日廃止)

10月24日(月)、今日はプランを変更して朝の一番列車に乗る。深名線に乗ってみようと思ったからだ。紋別発5時22分発の622Dで名寄へと向かう。夜明けのオホーツク海を右に見て、興部までは昨日通った区間を戻って行く。興部まで来ると雪がちらつき始めた。天候が気になる。薄く雪化粧をして程なく止んだ。列車が山間部に入って上興部に到着する頃から、再び雪が断続的に降り出した。雪の合間に晴れ間がのぞく妙な天気だ。しかし北見山地を越えて名寄に近づくにつれて雪が激しくなり、名寄盆地に入ると一面の銀世界となった。登校の高校生で満員になって、7時52分、名寄着。

 深名線のホームは駅の一番はずれにあった。そこに停っているたった一両のディーゼルカーが朱鞠内行924Dだ。車番を見るとキハ22 2。オール2の珍番号だ。8時29分発が3分遅れて名寄を発車。白い景色の中にこれから行く線路が二本の黒い線となってカーブを描いている。列車はそれをなぞって行く。手塩弥生から先は登り坂になり、エンジンが唸りを上げる。ノロノロと雪山の中を走ってトンネルに入った。どこからか黴び臭く湿っぽいトンネル特有の空気がディーゼルの排気の臭いとともに侵入してくる。これもまたローカル線の風情だ。トンネルを抜けると列車は下り坂を軽快に走った。

 日本一寒い駅で有名な北母子里を過ぎた。この辺りから左手に朱鞠内湖が見えるはずだ。暫くすると車窓に確かに湖らしいものが見えてきたが、一面真っ白でどこからが湖面なのかよく判らない。枯れているのだろうか途中から折れた木が、白い平面に何本も突き出ている様子が、林の間からちらりちらりと見え隠れする。

 9時37分、朱鞠内着。ここで深川行に乗継ぎだ。ホームには相当な雪が積もっている。足元に注意しながらホーム反対側に停っている深川行926Dに乗り換える。先ほどから雪は降り続いてはいるが、所々に雲の切れ間があり、そこからは陽が射している。

  9時45分、定刻で発車。列車は白い山の中を走る。この付近の山は尾根と谷とが複雑に入り組んでいるようで地形が判然としない。列車が進むにつれて山の形がめまぐるしく変化してゆく。再び雪が激しく降りだして今度はガスも出てきた。景色が良く見えない。幌加内では通信故障のため15分遅れて発車。深川での接続が気にかかる。列車はガスこそ消えたがまだ雪の降り続く丘陵地帯を走った。


Kamisunagawa station
「悲別」の名でTVドラマの舞台になった上砂川駅

 11時50分、3分遅れで深川に到着。予定通りに乗り継げそうだ。ここで306D急行「宗谷」に乗る。2分遅れで12時11分に深川を発車。乗った車両がキハ567で、本日2度目の珍番号。今日は面白い番号によく出会う。途中で雪も止んで雲間から青空を見る。空が広い。

 少し遅れて砂川着。ここでまた乗り換えだ。これから砂川から出ている2本の支線にまとめて乗る。約1時間半の待ち合わせ時間があるが、天気があまり良くないので駅の薄暗い待合室で、本を読みながら列車を待つことにした。どこからか冷たく湿った空気が吹き込み寒い。

 ようやく改札の案内があり上砂川行のホームに向かう。長く薄暗い木製の跨線橋を渡ると、本線からはだいぶ離れた裏寂しいホームに、927D上砂川行はもう入線していた。ホームには屋根もなく雪が積もっていたが、わずかに列車のドア近くだけ雪がどけられていて、そこが通路になっている。車両は新型のキハ40と古い急行型キハ27のちぐはぐ2両編成だ。

 14時11分、列車は寂しいホームからゆっくりと走りだした。左側の線路脇に上砂川支線の0キロポストが見えた。途中から雨になり、何とも冴えない景色の中を各駅に停車して、14時27分、上砂川着。ここは石炭の積み出しのための貨物専用という感じの駅で、この支線自体も貨物線と言った方が良い位だ。折返しまで5分しか時間がないので途中下車はやめておく。予想はしていたものの、それ以上に寂しい線だった。同編成の928Dで砂川へ折り返す。砂川に戻ると雪が再び激しくなった。

 さらに1時間の待ち合わせで、次は歌志内線に乗るのだが、それにしても列車に乗っている時間よりも駅での待ち時間の方が遥かに長いのだから、短いローカル線にまとめて乗るのも楽ではない。


Utashinai station
時間帯のせいか比較的活気のある歌志内駅

15時50分発歌志内行629Dはもうおなじみの新型キハ40と、今回初めて見る片運転台のキハ46の2両編成だ。この列車の乗車率は上々で座席はほぼ埋まっている。時間帯のせいかも知れないが先程の上砂川支線の列車は一両に二、三人の客しかいなかったのだから随分と差がある。歌志内線の景色も平凡で殺風景だ。小駅に一つ一つ停車しながら雪の中を走って16時17分歌志内着。線路の両側には雪の谷間にへばり付くように灰色の家が階段状に建てられている。陰気臭い景色だ。すぐ脇の道路をこの無彩色の街には不釣合いな派手な塗色の路線バスが猛スピードで走り去った。もう夕暮れも近く雪のためか冷えてくる。車内の暖房も効きが悪い。5分で折返しとなるので途中下車しないでそのまま車内で待つ。今日の走破記録はここまでだ。同編成が630Dとなり砂川へ折り返す。

 砂川発17時15分の838レは50系客車だった。本当は旧型客車を期待していたのだが、新型車両も気分の良いものだ。いずれにせよ客車列車は最高だ。列車は函館本線を快調に飛ばしている。やはり電化区間は早さが違う。途中岩見沢で乗客が増え、ほぼ満員になった。勤め帰りのサラリーマンやOLといった感じの客が多く、旅行者の僕などは場違いという感じだ。18時53分、札幌着。北海道の旅もいよいよ明日が最後となった。


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1983年 北海道
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